知りません
少し肌寒くなり始めた10月の終わり
近年では地球温暖化の影響により
夏がどんどん長くなり
噂では春と秋が無くなって
夏と冬だけのループになるらしい
さてその日の予約は昼の12時
とある小さなマンションへお迎え
時間少しまえにマンション前にて
お客様をお待ちしていると
ハンチング帽子を深く被り
大きなマスクをしたご婦人さんが出てきた
「ご予約の知蘭様ですか」
「そーですそーです ご苦労さん」
関西弁丸出しの大きな声だ・・
見た感じ大分ご高齢にうかがえる
行先は5キロ離れたとある私鉄の駅
ー 賃走 ー
知蘭様
おとうちゃんが朝急に鮭茶漬け作れって
言うもんやからバタバタしたは
起きた時に聞いたらパンでええて言うてたのに
急にやで急に
ホンマかなわんわ!
私
そりゃ大変でしたね
でもよく鮭ありましたよね
知蘭様
ほんまやで奇跡奇跡
でも歳は取たくないは
茶漬け作るだけでもしんどいし
若い時はもっと
シャキシャキ動けとったんやけどなー
よー周りからは
「元気な美人さん」なんて
言われたもんや
お兄さんはまだ若いからええなー
30歳ぐらいやろ?
私
いやいやそんな若くないですよ
もう50歳近いですしねー
知蘭様
え~見えへんわー
30歳ぐらいに見えるわ
ええなー若く見えてホンマええわー
あなた見えていないでしょ
私マスクしてますし後ろ向きだし・・
知蘭様
私も歳の割には若見えるって言われるねん
あっそ
私
へ~そうなんですか
(なんか嫌な予感が・・)
知蘭様
そーやねん
歳の割にはやで
でっ!お兄さん
私何歳に見える
私
えっ!
あ~
そ~ですねー
でもまだまだ若いんじゃないですか
(よく分らん返事)
知蘭様
そーやねんまだ気は若いつもりやけど
外見はやっぱり歳とるわな嫌やけど
でもまぁ同年代から見たら
若見えるんやないかな
知らんけど
で!
何歳に見える?
あなた深く帽子を被って大きなマスクをして
どうしてその質問をするか?
私
あ~そうですね
母よりかは全然お若く見えますね~
あの~まったく顔が見えないんですけど
こういう場合何が正解なのだ?
どれくらいに見られたいのか
60歳ぐらいか?
いやいや60も80も一緒だろ
では40歳ぐらいか?
いや~無理がある
知蘭様
そ~やねん以外と若く見られんねん
でももう お婆ちゃんやけどな
うちの次男も歳の割に童顔で
仕事先でお客に歳言ったら
驚かれるらしいわ
私に似たんかな~
で!お兄さん
私
何歳に見える?
知らん!
私
え~
お若く見えるのは間違いないですね
でもちょっとわかりませんね~
知蘭様
そ~やなこんな後ろの席じゃわからんよな
私今年で76歳になるんやけど
近所のスーパーの店長さんに
「いや~知蘭さん」
「50歳ぐらいにみえますわー」
って言われんねん
ほんまかなわんは
すみませんが
どーでもいい!
そして
年相応だと思います
私
そーですよね見えます見えます
見えますよね~
私もそう思ってました~
とても難解で正解のない問題に遭遇した
そんなあるお昼の出来事
女性というのは幾つになっても女であり
時にややこしい生き物である
カタカナ
その時私はとても険しい顔で
タクシーを走らせていました
険しい顔の理由は
とてつもなくトイレに行きたいからだ
しかも大きい方
じわりと変な汗をかき始め
大型のショッピングセンターの前を通った時
女性三人組が道端で手を挙げている
三人とも買い物袋を下げ
大阪のおばちゃん代表の様ないで立ち
車を道路端に寄せ扉を開ける
「いや~助かったわホンマ」
「蛇内駅までたのんますゎ」
「蛇内駅ですね かしこまりました」
車内に立ち込めるキツめの香水と
高齢者独特の香りの中
目的地に向け出発
ー 賃走 ー
後部座席に並んだ三人のご婦人
毎回だが
とにかくおばさんというのは
うるさい!
それにしてもいつも感心するのが
女性というのは何故こんなにも
話が尽きないのだろう
そんな事を考えていると
信号待ちでたまたま横にあった
「チョコザップ」
偶然目に入った「チョコザップ」でも
話が盛り上がるのだ
「これ最近増えてるわな~」
「うちの長女の旦那も通ってるらしいわ」
「そーなんや! 安いんか?」
「知らんけど安いんちゃうか」
「そやそやほんで通い放題やろ」
「このチョコザ!」
「でもなんか怪しいでチョコザ!」
ップ が足らん!
何故「ザ」で止める!
「それはそうと」
「あんたの息子 闇バイト大丈夫?」
「うちは大丈夫やわ」
「でも今よーニュースでやってるな」
「ホンマ怖い世の中やな嫌や嫌や」
「あれって携帯で」
「なんかゴニョゴニョしてるらしいで」
「そうそうあれやろ!あれ」
「エヌ エス エス や!」
おしいっ!
「そやそや」
「エス エヌ エヌ やろ!」
もうちょい!
「ウチらみたいな高齢者には」
「てんで解らんわな」
「エフ エヌ エス なんて」
これもおしい!
私は心の中で教えてあげる
S N S
エス エヌ エス
ですよ~
踏切にて電車の通過待ち
ふと横を見ると
ケンタッキー フライド チキンがある
「この鶏 揚げた店っておいしいの?」
「なんや鶏て チキンやチキン」
「ウチにはちょっと油っこいわ」
「そやなたしかに」
「でもこの店って全国にあるやろ」
「せやせや あ~なんて言うんやったかな」
「チェーン店みたいなやつやろ」
「あれやっ あれっ!」
「フランチャイルド」や
「そやそやフランチャイルド」
待て待て待て待て・・
ちょっとオモロ
何故「フランチャイズ」が
「フランチャイルド」になる?
それに何だ
フランチャイルドって
腐乱した子供
フランケン
シュタインの子供
フランスの子供
ゆっくりと遮断機が上がり
KFCを横目に走り出す
あまりに私のツボに入ったのか
いつの間にか私の便意は消えていた
そしておば様三人衆はというと
正解率5%程の「カタカナ」にて
永遠にしゃべり続けるのであった
そんなある日の出来事
お付き合い有難うございました
~ししまいmk~